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女に二言があった日

「女に二言はない」
いや
「女は二言してはいけない」
これが私の信条であります。

私はポルトガルを少しでも感じてもらおうと
スタッフのお昼ご飯にポルトガル料理を作っております。
ポルトガルの家庭料理なので手の込んだものはないのですが
自分自身のため、パウロのためにも毎日せっせと作っております。
もう4,5年前のある日、プーカラ壺焼きのチキン(FRANGO NA PUCARA)という料理を作りました。
ポルトガルから割れないように持ってきたプーカラ壺に鶏肉、小玉ねぎ、生ハム、白ワイン、ポートワインなどなどをいれて
蓋をしオーブンで1時間半から2時間くらいじっくりと焼きます。
すると素晴らしい旨味がでて白いご飯にかけても、フライドポテトと合わせてもサイコーの美味しさを味わってもらえます。
なんたって「壺」がそんまんまテーブルにポーンと置かれます。
その時点で
「今日のまかないはなんですか」とか
「いつもと違う」とか
「あつそー」とか
ナンデモいいから反応が欲しかった。
でも反応してほしいスタッフさんたちからの反応は全くかった。

「プーカラ壺料理を作っても反応あらへんのや。もう二度とこの料理はつくらへん」
と自分自身に誓った。

ところが、7月31日にいつも野菜を買わせていただいている無農薬の佐伯さんのところにサラダ用の赤玉ねぎを買いに行ったら
「もう本当に小さいものしかなくて、売れるような大きさの赤玉ねぎはないのよ。ほら。」と親指と人差し指をくっつけてOKサインを出すときの輪っかくらいの小さな玉ねぎを見せられた。
そのとき
(わー、プーカラ壺のチキンを作りたい!今いるスタッフに食べてもらいたい!)
と心から思ったの。
でも私は二度とこの料理は作らないと誓った身である。
Castella do Pauloの女将としてやってはいけないことをやろうとしているのではあるまいか、小玉ねぎを前にして葛藤した。
でもこの小さな玉ねぎでみんなを喜ばせたい、そう思った。

「みんな―聞いてくれる。明日のお昼ご飯にプーカラ壺のチキンを作ります。もう二度と作らへんと誓ったお料理なんやけど
佐伯さんとこの小玉ねぎが私をうごかしたの。だらか、明日お昼ご飯のときは
オーバーアクションで
【美味しー!】とか【
恐るべし壺料理!】とか
【カステラドパウロで働いててよかった!】とか
お願いやし言うてな。絶対、絶対に言うてな」

そうなの、
結局のところ、
私は自分のエゴでみんなのご飯を作っている。
ポルトガル料理を作らせてもらっているのは
「美味しー」
という誉め言葉が欲しいのだけなのだ。

つまり、私は見返りを求める女なのです。
そのこともスタッフみんなに伝えました。
私のやることすべてに
下心がありますー!と。

この壺料理の最後のお汁を
パスタに絡ませて夕食にいただきました。
女に二言があってはいけないが
今回に限っては
許そう。
ワインとの相性も抜群だ。